秋の阿寒湖 2000.11.29

モンカゲロウがスパーハッチし大型のアメマスがライズする阿寒湖。季節は6月半ば過ぎのこと。ドライフライでしかも近距離で狙える春の阿寒は全国的に有名になったが、その季節以外にも阿寒にはいろいろな釣りのスタイルがあり楽しむことができる。また阿寒湖に限らずその近郊にもまだ全国的には知られていないポイントも点在しているのだ。
私は、春は勿論だが9月末から10月初旬にかけて、毎年秋の阿寒を訪れることにしている。それは巨大なレインボーが釣れるチャンスが訪れるからである。ワカサギの網漁が始まり、その網を引き上げるとき傷ついたワカサギが網からこぼれ、それを捕食しに巨大なレインボーがボイルするらしいのだ。ワカサギ漁の漁師達はいつもロッドを船に乗せておき、漁の合間にかなり楽しい思いをしていると聞く。この状況は、鱒の回遊と漁のタイミングが合った時に起こるらしく、そう簡単にはこのタイミングに私たちが遭遇することはできないだろうが、定着型のレインボーではなく、スティールヘッドのような銀ピカでファットな大型レインボーが釣れる可能性を秘めているために魅力を感じてしまう。
昨年も漁協の[ジュンちゃん]の船に乗せていただき、漁師さんの情報を元に湖中を走り回ってそのボイルを探したが、ことごとく終わってしまった後の到着で、それらしきものは見あたらなかった。
今年もその時期に行ったのだが、今年は春からワカサギが多くその話は誰からも出ることはなかった。そう簡単にはいかないですね。
そこで今回は、回遊タイプをあきらめ、定着しているレインボーを狙うためにインレット辺りでストリーマーを引いてみると、ヒットするのは40〜50cmのアメマスばかりである。この時期のアメマスは禁漁であるために早々に切り上げ阿寒湖の近くにある[ひょうたん沼]へ行くことにした。(この時期はアメマスが釣れてしまう事があるので必ずバーブレスフックを使用し、もし釣れた場合は傷つかないように速やかにリリースしてください)

途中で漁協へ立ち寄り[トクさん](阿寒漁協の漁券を川でチェックしている方)にひょうたん沼の情報を聞いてみると、「最近は良くないから阿寒川に行った方がいい」と教えてくださったが、しかし私はどうしてもひょうたん沼が気になっていた。それは4年前エメラルドの高田支配人に案内していただいて、初めてひょうたん沼に来たとき、忘れもしない経験をしていたからである。

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9月の半ば過ぎだったと思うが‥‥。
ひょうたん沼の静かな湖面に時折ライズリングが広がり「ボコッ」・・・「ボコッ」とライズ音が聞こえていた。そのライズは、何を捕食しているために起きているかを観察してみると、それはなんとアメンボを捕食していたのである。水面には無数のアメンボがいて、水面が割れると四方八方に逃げ惑っていたのだ。生まれて初めて見た状況である。勿論アメンボのフライなんて持っているわけがない。釣り人は少なく鱒がスレていないから何にでも出るであろう安易に思い、いろいろなパターンを試してみたが全く無視され惨憺たる状態となっていた。フライボックスを眺めているとふと閃き、その後ライズが近づいて来たときに私はそのフライボックスに入っていた一つのフライを結んでみた。
ドライシェイクをたっぷり染み込ませてキャストしてみると、「スポッ」とフライは見事に吸い込まれたのである。メチャクチャに走られ、やっとの思いで寄せてきた鱒は50cmジャストのヒレピン・レインボーであった。・・・・・・これはビデオ撮影の時のこと。

実はここで使用したフライは、ガガンボ・フライ。サイズを大きく作りすぎて、フライボックスの肥やしになっていたフライである。ドライシェイクでハイフロートになり、アメンボに見えてしまったようだ。
この様な、他に経験のない思いをしているとどうしてもまたここが気になってしまう。皆さんも経験ありませんか?

一度大物を釣ったポイントはダメと解っていても、覗いてみたりキャストしたくなりませんか?そんなわけで今年もひょうたんに行ってみたくなったのだ。

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トクさんに言われたように、ひっそりと水面は静まり返っていた。時折「ピチャッ」と小型のレインボーがインレットの脇でライズをする程度の状態である。一緒に行ったエメラルドの新入社員[大平くん]と静かに待っていたもののその状況は一向に変わらず、しびれを切らした私たちは、闇雲にドライ、ニンフ、ストリ−マーと試した見たが全く鱒の気配すら感じなかった。そこで、さらにいろいろと試しているうちに大平くんがソフトハックル・フライで20cm位のレインボーをキャッチしたのだ。

「杉坂さんより先に釣れたー!」彼は大喜びである。いろいろ一緒に行ったが初めての出来事であり、喜ぶのもうなずける。そこで「そのセリフ挑発してるの?」と聞くと、さらに彼は「小さいけれど天然ですよ。テ・ン・ネ・ン!」と答え嬉しそうにしていた。「よーしその挑発!乗ったぞー」と笑いながら「秘密のパターンだな。 大平先生に挑戦ダー!」と二人で大騒ぎをしていた。
しかし、いろいろと試してみたがその後二人とも全く無反応だった。一発大物と言う言葉は良く耳にするが[1匹小物の大平先生]には勝てずに、あきらめて帰ろうとしたとき、ふと思いついたのが「キンギョちゃん」である。
「最後にこれキャストしてダメなら阿寒川へ行こうよ」と半ばあきらめながら「キンギョちゃん」をおもむろに結びキャストすると、1投目から引ったくるようにマーカーが水中へ消えたのだ。

軽くフッキングすると、「ドン、ドン、ドン」と鱒が顔を振っている振動がロッドに伝わり、その直後リールのドラッグが泣き叫び、ラインはどんどん引き出されていった。「キンギョちゃん投げたら一発だよ」と言いながら、私もこのことには驚いていた。キャッチした鱒は美しい大型のレインボーだった。(写真)
さらに驚いたことは、その後1キャストごとにアタリが出て次から次とヒットしていったのである。

それが皆同じようなサイズの鱒で、カラーのローテーションをするだけで釣れ続いたのであった。
これを見ていた大平くんはビックリ!
キンギョちゃん信者になってしまいました」と。
でも本当に驚いたのは私自身だ。これほどまで効果が高いとは思っていなかった。
やはりトラポンの超スレ鱒で生み出されたフライは、“凄い”とつくづく感じさせる旅であった。

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